追憶7710 第10章 ようやく遊戯は終焉へ act.68 &追憶7710 エピローグ act.69

追憶7710 第10章 ようやく遊戯は終焉へ act.66-1~act.66-4はこちら

■終

act.68 猪名川 奈菜斗

 結果から言おう。
 私は負けた。
 言うまでもないだろう、私はジョーカーが、いやこのゲームそのものがワクチンの副作用によって変わってしまったことを私が知らなかった。
 何も分からず困惑するばかりの私はジョーカーに一瞬にして打ちのめされた。
 しかし殺されてはいない。私は生きている。
 変質したジョーカーは私にゲームの記憶と能力を与え、さらに設定した覚えもない優勝者のみの能力も与えれた。
 そしてジョーカーは独立した意志を持ってどこかへ行ってしまった。もっとも最初から独立はしていたのだが私の設定外の行動を取っているという意味での独立だ。
 ちなみに私の設定は優勝者したものはジョーカーによって本当の世界へと戻るというものだ。
 しかし変質したジョーカーではそうはいかないらしい。これはもちろん後々分かったことだ。
 ジョーカーを倒すことで本当の世界へと戻ることができる権利を得られ、さらにはこの世界での自分を消滅させることで、本当の世界へと戻れるようになったらしい。
 ともかく私は負けた。
 さらに私は日が経つにつれ、ゲームの存在を忘れていった。思い出したのは第二回のゲームが始まった途端だ。
 そして私はゲームが変質したという予測を立て、そのうえで行動を開始した。第一回のゲームの際に行なうと決めていたことも都合よく思い出した。それを本当の世界という外部ではなく、この世界という内部から修復を行なった。
 まだ第二回目のゲームが終わってないと感じ取れた私は急いで参加者を探す。今度こそこの手でジョーカーを殺し、本当の世界へと戻らねばならない。
 しかし知っての通り、規定人数を超えた第二回目のゲームは優勝者なしで幕を閉じ、第三回目へと移行した。 私はだからと言って焦りもしなかった。それはそれで娘が救済される可能性が高まるからだ。
 そして私は羽田青磁を見つけ、第三回目のゲームの参加者となった。それからは知っての通りだ。優勝したのは市ヶ谷 晶良。本当の世界へと戻る権利を得た市ヶ谷 晶良は何も知らず、ただただゲームに絶望し、自殺を図った。それが奇しくも、この世界での消滅へとつながり、本当の世界へと帰還した。
 さらに付け加えるのならば私が当初していた設定では優勝者のみが帰還できるはずだった。それはつまり私のみが帰還することを意味した。
 しかしジョーカーが変質し、そのゲームに参加していた全員が帰還するように変わっていた。そのせいかおかげか、私は本当の世界へと戻っていた。帰還後、私への糾弾は当然あった。そして独房へと入れられた。
 あとは分かるだろう。

 ともかくこのゲームの結末は、私は負けた。ただそれだけなのだ。

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2008-09-12 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 0 : トラックバック : 0
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追憶7710 第10章 ようやく遊戯は終焉へ act.66-1~act.66-4

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■結末

act.66-1 多良部 多々良

 覚悟を決めるのは簡単だった。でも終わるもの簡単だった。
 俺へと向かってきたサラリーマンは尋常じゃない速さで俺に掴みかかり、俺の頬を殴り、腕を折り、腹を蹴る。
 何も抵抗できず俺はされるがまま、折られていない腕も折られ、いよいよ首を掴まれる。
 折られる直前、俺は呟く。
「無効――Many」
 俺の首が折れ、サラリーマンはその手を離す。
「何をしたか分からんが、所詮お前はその程度だ」
 俺は意識が途絶えたように、冷たい床に倒れる。
 しかし、俺は死んでなどいなかった。
 首を折られる間際に呟いた俺の能力は、俺の複数ある傷や骨折に作用し無効化していた。
 俺が無傷なのをこいつは気づいていない。その油断を俺は狙う。
 俺が駆け出し、後ろを向くそいつに殴りかかろうとする。しかし、そいつは俺の攻撃を予測していたかのように避ける。
「……っ!」

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2008-09-06 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 4 : トラックバック : 0
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追憶7710 第10章 ようやく遊戯は終焉へ act.65-1~act.65-4

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■静けさ

act.65-1 猪名川 奈菜斗

 自動以外で能力が発動した際、自動の発動キーは解除される。答えはこうだろう。
 もちろんこの能力に限っては少し特殊だったわけで他人及び自分に作用する本来の自動という発動キーは違う発動キーを使っても解除されない。私はジョーカーに簡単な答えあわせをしてみる。結果的にそうなったのだからこれで合っているのだろう。ジョーカーも何も言わない。すねているのかもしれないな。
 さて、これでなんであれ残り三人。もしかしたらあのどちらかが出会い、既に私とどちらかのふたりになっている可能性も少なくはない。
 もうすぐ終焉を向かえ、そして私の計画は実行に移されるというわけだ。二一が恨んだとしてもそれは仕方のないことだろう。確かに私は裏切ったわけだから。だからと言って贖罪はしない。
 私の研ぎ澄まされた神経が静けさの中に、足音を感じさせた。どうやら誰かのご到着のようだ。
 私は備え付けのはしごを登り、二回の狭い観客席へと移動した。扉が開き、誰かが入ってくる。

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2008-08-30 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 1 : トラックバック : 0
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追憶7710 第10章 ようやく遊戯は終焉へ act.64-4~act.64-8

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act.64-4 洲本 遙

 私に何が起こったのか知りたいようで知りたくない。でもなんとなく何が起こったのか理解しているみたいで理解していない。思考が混乱するぐらい何が起こったか分からないようで、どこか分かったような気でいる。でもひとつだけはっきりしていることがある。それはもうあんな感触を、死ぬような感触を味わいたくないということ。
 不意打ちを食らわせてみたけど、そんなんじゃまだ駄目。もう死にたくないから戦わないと駄目。どうするかは決まっていた。けど思い出せない。
 ――ヒャーッハッハッハ。Immortalityだろ。発動キーは召喚な。ヒャーハッハッハ。こりゃ面白くなったよ。せいぜい頑張ってみてよ。
 都合よく、悪魔が私に囁きかける。
 丁度サラリーマンも立ち上がり私へと向かってくる。右手を突き出し、また私を掴もうとしている。私はそう判断し、魔の手から逃れようとして右方向へと回避。回避する最中私は気づく。右手はフェイント。回避は読まれていて私が避ける同時に回し蹴りが放たれていた。回避する最中、気づけた私はなんとか身をよじり、常備していた無線機にその蹴りをぶつけ直撃を回避。それでも威力は尋常じゃなく私は吹き飛ぶ。私が急いで身を起こすと眼前にはサラリーマン。追撃のように私へと向けて拳を放っていた。
「召喚――Immortality」
 突然、現れた何かがサラリーマンに立ちはだかり、現れたときに発生した衝撃波がサラリーマンを吹き飛ばす。  その何かの身はドロドロに溶け、まるで腐食しているようで、その腐食した身は腐食しているにもかかわらず骨は見えない。時々見える骨はひび割れていたりして、でも骨の合間から見えるものは何もなく空洞になっている。まるでゾンビだった。そのゾンビは破けたマントに身をくるみ、頭には数えるほどしかない髪の毛とそこに神々しく輝く金色の冠。それが私の能力、Immortalityらしい。
 その場を救ってくれた能力は私にとってあまりにも最悪だった。私はこの手のものが大の苦手だからだ。それでも悲鳴と失神を気合でこらえた。

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2008-08-23 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 0 : トラックバック : 0
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追憶7710 第10章 ようやく遊戯は終焉へ act.63-1~act.64-3

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■千夜一夜物語

act.63-1 犀川 あらじん

「で真琴と"ill.K"が一対一で対峙した時、閃いたという形で真琴は今から言うことを思いつく」
「そうやって焦らさずに言うでございますですよ、ご主人様!」
「ああ、その内容はね、能力の移譲さ」
「……どういうことでございますですか? また我輩めが違うご主人様の元に行くと?」
「ああそういうことだ。さらにその移譲のタイミングは"ill.K"が真琴に移譲された僕の能力を奪う時さ。その瞬間"ill.K"へと能力 は移譲される」
「しかしそれですと……殺すことにはなりません」
「分かってる。その後の話だけど、"ill.K"がジミーに3回要請したら、3回目の要請をなかったことにして"ill.K"を殺すことを僕は要請する。できるか?」
「ひとつ、問題がありますです」
「なんだよ?」
「我輩めが延々と真琴様、"ill.K"様を完全に操るのではありませんですよね?」
「ああ、全ての言動を操るというよりは、僕の要請がきちんと達成されることを僕は要請する」
「だとすれば真琴様が同じことをしようとした場合、わずかな齟齬で我輩めの思考がロストする場合がございますです」
「例えばどういうケース?」
「移譲するというところまで同じだとしても、真琴様が要請した途端殺すと我輩めに要請した場合、ご主人様の3回と真琴様の1回という齟齬が発生いたしますです。その場合、完璧に要請をこなせなくなりますです」
「僕のを優先することを僕が要請した場合は?」
「我輩め、それはあくまで優先でございましょう。3回目の要請で殺すを優先した場合、1回目の要請で殺すという要請が不可能になり我輩めはロストします」
「真琴が思いつかないようにする。というのも僕の思いつくように、という要請で駄目。かと言って以後の要請を無効にするとなると真琴が何かに気づくかもしれないし、真琴が気づかなくても、"ill.K"が絶対気づくな」
「如何致しますです?」
「もし、回数が違った場合は、平均値で要請するように思考を改めることを要請した場合、できるか?」
「つまりは1回と3回ですと2回で実行されるように思考自体を変えて欲しいとそういうわけでございますですね?」
「ああそうだ。僕の要請によってジミーは作り変えることだって可能だろう?」
「かしこまりましたです。ちなみに小数点以下は如何いたしますですか?」
「切捨て」
 僕は短く言い切る。
「かしこまりましたです」
「それじゃあ全ての説明が終わったところで僕は要請する」

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2008-08-16 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 0 : トラックバック : 0
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追憶7710 第10章 ようやく遊戯は終焉へ act.61-6~act.62-3

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act.61-6 多良部 多々良

 良かったと俺は安心していた。彼女が避けてと言ったときは本当に避けていいものかと躊躇ったが、彼女の意志を尊重して良かったわけだ。
 しかしこれで彼女に万が一があったら俺は自分を悔いていただろう。
 このまま、彼女をここに置いておくのはまずいのかもしれない。
 俺はどうにかして彼女を連れ出そうと考えた。
 隙を見つけなければならない。そう思い周りを見てみれば、サラリーマンともうひとりの男が激突していた。こっちの気配を察してはいるのかもしれないが、今がチャンスなのかもしれない。
「こっちだ」
 俺は彼女の手をひき、その場を去った。扉を開ける音はきっと聞こえたのだろうが、あいつらは見向きもしなかった。何せ、あいつらの動きは尋常じゃなく、おそらくお互いが気を抜いたら抜いたほうが死ぬのだろう。
 そう思ったら俺はよく生き残れたものだと安堵し、同時に恐怖に襲われた。
 体育館の外に出れば、大きな廊下に出た。近くには二階へ進む階段、その階段下にはトイレ。少し歩いて入口に近づけば受付がある。
 入口の扉を押してみたが動かない。
「それ、引かなきゃだめですよ」
 そう指摘されて引いてみたが、やはり動かない。もしかしたら廃棄寸前で、扉に鎖が巻かれて開かないのかもしれない。外に出るのは無理か。
 右を向くと、案内図があった。俺達が先程までいたのが第一体育館。向かい側には第二体育館とある。第一よりも面積は小さそうだが小さな倉庫もある。ここに隠れさせれば安全かもしれない。
「こっちだ」
 俺は彼女の手を引き、移動する。第二体育館へと入り、さらに倉庫へと入る。
 倉庫の中には何も入っておらず、比較的広い。
「ここにいてくれ」
 彼女は頷いた。
 俺は倉庫を閉める間際、
「あのふたりを倒し終わったら迎えに行く」
 そう伝えて第一体育館へと向かった。
 しかし俺は若干ながら、後悔した。俺が見た光景は第一体育館の破壊されたステージとそこに倒れる男の姿がひとり。
 サラリーマンがどこにもいなかったからだ。

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追憶7710 第10章 ようやく遊戯は終焉へ act.61-1~act.61-5

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■ともかく戦いは始まった

act.61-1 佃 音字

 俺は初めましての挨拶もなしに標的を定めた。
 標的は、女だ。
 なんてったって目つきが違う。
 俺とも警官とも、サラリーマンとも目つきが違う。
 俺に写る女の目つきは、怯え、恐れ。そんな目だ。
 激戦を繰り広げ、勝ち残ってきた奴の目なんかじゃない。
 運良く生き残っていた感じだ。
 だったら殺すのも簡単だ。それにそんな運良く生き残っていた人間なんて迷惑だ。
 俺達は殺しあって最後のひとりを決める。覚悟も殺意もない運だけの人間はそれだけでいらん。
 だからこそまずはこいつを殺す。
 俺は110円で買った安物の包丁を握り、女へと駆け出す。
 女はそれに気づくも、動こうともしない。
 それどころか、来ないでって叫んでやがる。
 ハハッ、行くに決まってるさ。
 怯えただけじゃ死ぬだけだ。自分でなんとかしなきゃ死ぬだけだ。誰も助けちゃくれない。
 だから、お前は死ね。
 俺は包丁を振り上げ、女に向けて、降り下ろす。
 お前の価値は110円にも満たない。そう思いながら。
 しかし俺の包丁は、誰かの棒に弾かれる。
 そしてそいつは言った。
「俺がいる限りこの人は殺させない」
 その言葉に俺は大笑いしていた。

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2008-08-02 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 2 : トラックバック : 0
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追憶7710 第10章 ようやく遊戯は終焉へ act.60-1~act.60-4

追憶7710 第9章 狂乱は惨事を招くはこちら

追憶7710 参加者リスト(ネタバレ含)はこちら
第10章 ようやく遊戯は終焉へ


■そして参加者は集った

act.60-1 佃 音字

 果たして人間の価値はどのくらいあるのか?
 俺はそんなくだらないことを考えてすぐにやめた。
 結論が、出たからだ。
 人間の価値なんて110円にも満たない。
 そう思いながら110円均一ショップで、包丁に、金槌を買った俺は店員からレシートを貰い店を出た。
 これからこれで人を殺すなんて、あの店員は思うだろうか。いや思わない。
 包丁と金槌だけを買ったなら、想像力豊かな人間はもしかしてと考えるかもしれないが、包丁にまな板、金槌に釘を買ってしまえば、前者は料理、後者は修理か何かに使うんだとおそらく思うだろう。
 しかしまな板と釘はフェイクだ。
 中学生が周りにエロ本を買っているのがばれないように偽装として一緒に情報誌を買うようなものだ。
 いやこれは店員にはバレバレらしいから例えとしても間違いか。
 そしてこのたった110円(税込み)で、バスジャックだろうが、タクシージャックだろうが、計画的殺人だろうが、無差別殺人だろうが起こせる。
 だとしたらそれら犯罪で殺された人間は、110円程度の価値しかないように思える。
 実際はもっと価値がある人間なのは俺だって理解している。
 しかし安物の包丁や、金槌で殺された人間はたったそれだけの価値しかなかったように俺は思えてならない。
 これが一般的解釈ではなく、俺だけの解釈だと言うことも添えておく、誰にかは知らんが。
 ともかくこれで俺の準備は揃った。
 なぜ準備を揃えたかは単純だ。
 俺は恐ろしく阿呆だった。
 なぜこの能力を手に入れてすぐに要請しなかったか分からない。
 それはおそらくあらじんが、そんなことを使おうとはしなかったからだ。だからあらじんの人格になっても気づきもしなかった。
 ill.Kに戻り冷静に考えてみると手の込んだ捜索などする必要すらなかったのだ。
「召喚――Fairy」
 俺はジミーを呼び出す。
「ハハホホ……」
 奇怪な笑い声が言い終わる前に、俺はジミーに問いかける。
「全参加者を、誰もいない廃屋に呼び出すことは可能か、不可能か?」
「可」
 短くジミーは答える。笑い声を中断されたのが気に食わないらしい。くだらん。
「俺はそれを要請する」
「三回目の要請でございますですよ」
 それがどうした。そんなことどうでもいい。
 俺がそんなことを思っている間に、俺の身体は廃屋へと移動していた。
「ここは?」
「今は使われてない廃市民体育館でございます。累積赤字で運営停止、壊すにも経費がなくて放置された体育館でございますですー」
 そんな薀蓄を聞き流しながら俺はあたりを見回す。
 現れた参加者は俺を含め、四人だった。四人しかいなかった。
 それを見て俺は笑みがこぼれた。

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2008-07-26 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 0 : トラックバック : 0
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追憶7710 第9章 狂乱は惨事を招く act.58-15~act.59-39

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act.58-14 迩摩 恵理

 やっぱり私は神の舌なんて持ってない。持っているとしたら少なくとも神の恩恵を受けているってことだ。
 それはつまり、この舌を使って、他の人に美味しさを明確に伝える使命を持っているはず。
 なのに、今この飛行機は墜落しようとしていて、唯一運転できる操縦士はふたりとも倒れている。
 このままじゃ本当に墜落する。
 それとも神の恩恵である舌を持つ私だけ助かるとでも言うの? そんなはずはない。
 神の舌なんて所詮、私を囃し立てた人間がつけた大仰な名前だけにすぎない。本当に神から授けられたものではなかった。
 私は目を瞑り、腕をあわせ、祈る。
 仏教に従事しているお坊さんの念仏を言うつもりはさらさらないけどそれでも祈りが届くなら、私達を助けて欲しいとそう祈っていた。
 その間にも飛行機は傾き、下へと向かっていた。

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追憶7710 第9章 狂乱は惨事を招く act.58-9~act.58-14

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act.58-9 土師 杏里

 苦しさから私は少し咳き込んでいました。
 そんな時、
「オートパイロットが解除されてる?」
 操縦席から副機長の根占さんの声が聞こえました。
 操縦室を覗き込んで私は思わず言ってしまいました。
「どういうことですか?」
「どうもこうも、この飛行機はついさっきまで自動で高度を維持していたんだ。解除されてしまったなら降下するに決まっている」
「じゃあ墜落?」
 言った途端、私は軽率だと思いましたが、あとの祭りでした。
 後方にいたお客様にも丸聞こえだったのです。

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追憶7710 第9章 狂乱は惨事を招く act.58-5~act.58-8

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act.58-5 根占 総一郎

 俺の楽しみはこの時だけだった。
 飛行機の運転。ただそれだけだった。
 心地良さと快楽が同時に味わえる、それは俺にとっては至福の瞬間なのだ。
 高校の時に彼女がいたが、養成学校に入ると会えなくなるから別れた。後悔なんてしてない。
 俺にとっては、その彼女よりも飛行機のほうが価値が高い。
 養成学校に入るまでエリートなんて自覚はなかったが、飛行機に全てを費やせる俺はやはりエリートだった。
 他の同期よりも数十倍も卓越した技術を持っていた。
 養成学校でも彼女が作れればなんてことをほざく同期がいたが、今の時代でもパイロットになりたい女性など少なく、養成学校は、ほとんど男ばかりで彼女を作りたいなら街に出るしかないが、飛行場に辺りを埋め尽くされているため、街までも遠く、そう作れる機会などなかった。
 もっとも俺にはそんな機会不要だったが。
 そうして飛行機乗りになって、快楽を味わっているというのに、客室から喧騒が聞こえる。
 煩わしい。
 気にするな、と機長が言っていたが気になるに決まっている。
 しかも今は扉がなぜか破壊され、声どころか姿も丸見えだ。 気にならないほうがおかしい。
「うっせぇ」
 いつの間にか俺は叫んでいた。

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2008-07-12 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 0 : トラックバック : 0
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追憶7710 第9章 狂乱は惨事を招く act.57~act.58-4

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■不運

act.57 佃 音字

 俺が市役所なりなんなりを駆使し、伯方押男という男を捜し始めて4日目。
 ようやくそいつの仕事先を見つけたと思ったら、そいつはどこかにでかけていていなかった。
 その日の夕刻、
 ――次のジョーカーは平群 撫子。
 そんな宣言が俺の頭に響く。
 つまり伯方押男は死んだということだ。
 そして俺の4日間の苦労は水泡に帰したわけだが、参加者が減ったのだから喜ぶべきだ。
 しかしそれでも、4日という日数はかかりすぎだ。
 もっと手早く探す術はあるのだが、どうも気が引ける。
 しかし4日間動き回り、他の参加者に俺のことが知られ、不意打ちされるのであれば、さきに他の参加者を知り、不意打ちしたほうがいい。
 そう判断した俺は、奪った能力とやらを試すことにした。
「召喚――Fairy」
 俺がそう呟くと「ハハホホヘー」と奇怪な笑い声を出しながらランプが現れる。
「お呼びでございま……」
 最後までランプの声を聞かず、俺は言う。
「俺は要請する。一番近くにいる参加者がどこにいるか教えろ」  言った途端、
「一回目の要請でございますですね。承りましたでございます。それでは我輩めが、もっとも近い参加者のもとへご案内いたしますですよ」
 言われるがままに、俺はランプの後をついていく。
「おい、待て。お前が参加者以外に見られたら、そいつらは参加者になるんだろうが。姿を俺だけにしか認知できないようにするなりしろ!」
「要請されますですか?」
 その問いに俺は舌打ちする。
 こいつは要請しなければなにもできない役立たずだ。
 渋々、「要請する」と言った途端、
「それではこれが二回目の要請でございますです。それではドロロン、ハイ消えましたでございますです」
 ……到底消えたようには見えないのは、俺だけが認知できているからだろう。
 ともかく俺が要請し終わると、ランプは動き出す。俺はそれについていく。
「あの方にございますです」
 ランプの注ぎ口から出た煙が、あの方とやらを囲い、俺にそいつが参加者だということを教える。
「あの主婦みたいなのがそうなんだな?」
「そうでございますですよ。如何程に?」
「どういうことだ? 殺せとでも要請して欲しいのか。残念だが、そんな簡単なこと、要請するまでもない」
「そうでございますですか」
「ああ、そうだよ」
 俺はランプの気に食わない喋りに終わりを告げ、その主婦の背後に近づく。
 でもまだ殺さない。ここには人が多すぎる。
 巻き込むのも確かにありだ。以前までは気にしてなかったぐらいだ。
 しかしながらなにやら嫌な予感がしていた。
 そもそもこれは殺し合いだがゲームだ。
 無制限に参加者を増やしていけば終わりがない。
 参加時、ゲームが最後のひとりになったら終了というクリア条件しか言われてない。どうせこれすら一部参加者のみにしか説明しなかったりするんだろうが。
 しかしそれゆえ俺は推測する。実はゲームオーバー条件、誰も助からない条件も隠されているんじゃないかと。
 だとすれば図書館のときも駅のときも、人を殺しすぎたと反省せねばならない。巻き込むのは良くないと今更ながらに思ってしまった。下手すれば俺も死んでいた。
 このゲーム、初めの参加者がふたりならどっちがどっちかを殺しただけでクリアできる。
 しかし百人いれば九十九人殺さなければならない。もちろんひとりでではないが。
 だとすればどうだ、上限を決めておかなければ延々とゲームは続き、おそらく本来の目的とやらがいつまで経っても達成されない。
 このゲームが何のために作られたなんてことは興味がないが、何にせよゲームには目的があるのだ。
 だからこそ、殺しすぎは良くないと今の俺は考え出していた。  だからこの主婦がひとりになるまで待つ。誰もいなくなる状態というのはどこかにあるのだ、必ず。
 気づかれないように俺は後をつける。
 仮に後をつけているのがバレたとしても、あの主婦がまず思うことはこうだ。勘違いかもしれない。大概の人間は歩く速度をあげ、それでもついてくるか確認するはずだ。
 人間はまず確証が欲しいのだ。勘違いでしたで済ませない人間もいるのだ。ゴメンなさいと謝っても許さない人間がいる。くだらない事柄でもなんでも、司法に持ち込む人間がいるのだ。迂闊に勘違いできないのが、現代社会だ。腐ってやがる。
 数分、歩いてみたが、どうやら気づいたらしい。速度があがっている。
 さあ、どうやって俺がつけているか確認するつもりだ?
 俺も速度をあげて、離れないようにする。
 だんだんと笑いが込み上げてきた。こうも想像通りに事が進んでいくとはね。
 つけられていることを確認しようと、その主婦は薄暗いトンネルへと入っていく。
 確かにここの場所は人通りが格段に少なく、確かめやすい。
 でも、それがそもそもの勘違い。俺は人通りの少ない場所に来るのを待っていたからだ。
 俺は主婦と同調していた歩きをやめ、駆け出す。
 駆け出しながら、ポケットに潜めていた安物のナイフを取り出す。安物ゆえに切れ味は悪いかもしれない。それでも、殺すには十分だ。
 駆け出す音が聞こえた主婦も危険を察知し走り出す。
 でも遅すぎだ。
 追いついた俺は、肩を掴み、無理矢理こちらを向かせると、殴る。
 悲鳴とともに主婦の顔が恐怖に変わる。
 ニュースでよくある「殺すのは誰もよかった」だなんて動機をほざく無差別殺人はこうやって起こるのだろうな、なんて他人事のように思ってみる。
 そんなことを思ってみたらおかしくなった。
 恐怖で顔が引きつった主婦を押さえつけながら、俺は笑いが止まらなくなった。
 じゃあ、死んでくれよ。
 俺は主婦の顔めがけてナイフを突き刺した。
 飛び散った血を手を拭い、その場を去る頃には、主婦の身体は動かなくなっていた。
 その主婦が、実はこのゲームの原因をなくすワクチンを持っていたなんてことを俺は知るはずもない。
 もしそんな大それた運命を握っていたとしても俺にはどうだっていい。
 俺に殺されるぐらいの運しか持ち合わせてなかったということだ。そんな運で誰も救えるはずなどない。

累計参加者54名
生存参加者13名
死亡1名――木島 喜代子。
残参加者12名。

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追憶7710 第9章 狂乱は惨事を招く act.56-1~act.56-7

追憶7710 第9章 狂乱は惨事を招く act.55-1~act.55-5 はこちら
■つまらない人間と面白そうな人間

act.56-1 土師 杏里

「いかがなさいました、お客様?」
 そう尋ねた私の首をお客様はいきなり掴みかかります。
 そんなアクシデントにもうろたえず、誠意を持ってお答えするのが客室乗務員の務め。
「……いかがなさいましたか?」
 そのお客様にもう一度問いかける。
 そのお客様は私をすごい形相で睨みつけています。さっき倒れて意識不明になったとは思えません。
「降ろせ!」
 そのお客様は静かにそう言いました。
 聞き間違いだと思い、もう一度尋ねようと口を開こうとした途端、
「いいからとっとと降ろせ! ここから降ろせと言ってるんだ!」
 そう言って私に掴みかかるお客様。
「ちょっとあんた何してるのよ!」
 平群さんがその状況に落ち着きをなくしたのか私に掴みかかるお客様を払いのけようとしました。
「うるさい、邪魔をするな! とにかく降ろせ! 降ろすんだ、今すぐ」
 私とお客様のやりとりを他の人は呆然と立ち尽くしています。
「無理に決まってます。今は空の上ですよ。近くに空港だってないんですから! とにかく到着するまで待ってください!」
 平群さんが罵声のようにお客様に説明し始めた。

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追憶7710 第9章 狂乱は惨事を招く act.55-1~act.55-5


■空の中

act.55-1 飯豊 綱吉

 うむ、順調だ。何事もなく航路を辿っている。
 あと一時間もすれば着陸準備に入る。
 それが終われば実質の引退だ。
 アナウンスが聞こえる。快適な空の旅を。
 その快適さを私だけではないが、担っている。チーム一丸でお客様に快適さを与えなければならない。
 このアナウンスが流れるたびに私は気を引き締める。
 それでは皆々様、快適な空の旅を。胸の前で十字を切り、今日も旅の無事を祈った。

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2008-06-21 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 2 : トラックバック : 0
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追憶7710 第9章 狂乱は惨事を招く act.54-4~act.54-8

追憶7710 第9章 狂乱は惨事を招く act.53~act.54-3はこちら

act.54-4 飯豊 綱吉

 今日は私の最後のフライトと言える日だった。
 私が運転するこのプロペラ機の休止が決まったのが半年前。  それ以前も以後も、赤字ばかりを計上していたのだから休止するもの当たり前だった。
 このプロペラ機が休止するのは一週間後の今日、しかしそれでも今日が私にとっては最後のフライトだった。
 私はこのプロペラ機が休止するのに伴い、現役を退く。
 それでも先程言ったように、プロペラ機が休止するまであと一週間あるのだ。
 しかし私が今日が最後のフライトだと強く念を押すのには意味がある。
 そう、今日がお客を乗せて飛ぶ最後の日だった。
 しかしそれもあくまで可能性である。誰も乗らずとも、誰かが乗る可能性があるのだ。飛行機は完全予約制ではない。当日券を買って乗るお客も当然いるのである。
 しかしこのプロペラ機においてそれは類稀なる珍事であった。
 なぜかこのプロペラ機に乗るお客は必ず予約するのだ。
 そして予約したお客以外誰も乗らないという摩訶不思議な真実があった。
 しかし何事にも例外がある。明日以降の一週間、誰かが予約せずに乗るなんてことが起こりうるかもしれないのだ。
 それはともかく私は意気込んでいた。やはり、今日が最後のフライトになるだろう、と。
「よろしく」
 私が副機長に挨拶をすると、
「ああ」
なんて軽く返事をしてくる。この際、礼儀に関してはとやかく言わない。
 まだまだこの副機長は若い。
 これから経験を積んで、優秀なパイロットになるのだろう。
 そのためにも私は今までの技術を彼に教え込まなければ。

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2008-06-13 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 0 : トラックバック : 0
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追憶7710 第9章 狂乱は惨事を招く act.53~act.54-3

第8章 されど遊戯は巡りめくはこちら


第9章 狂乱は惨事を招く


■出番?

act.53 世知原 春樹

 久しぶりに俺、参上!
 つっても今まで何してたかって訊かれたら、バイトとしか言いようがないんだけどな。
 でも今日は違うぜ?
 今日はバイトに行くはずだったんだけどな。
 でも明日、明後日生きるためにバイトで金稼ぐよりも今を生きるほうが大事だろ。絶対。
 ジャスティス仮面の限定生産DVDボックスもほしいけどな、そんなことよりも今を生きることが大事だろ。
 何が言いたいかっていうとだな。
 俺は今追われている。殺されそうになってんだ。意味分かるか。
 分かるよな、俺は参加者というやつだからだよ。理解したか?
 にしてもなんだよあのおっさん、スーツなんか着こなしてよ。まるでサラリーマンじゃねぇーかよ。
 それがあんたの戦闘服かって話だよ。どこの秘密結社だ。
 でもおかしいだろ、逃げてる俺は自転車だぞ。
 俺のマイバイク仮面メソダー(俺、命名)のスピードに追いつけるはずもねぇ。
 なんだよ、このおっさん、陸上選手かよ。いや陸上選手でもおかしいだろ。
 俺の速さについていけないはずだ。しかも俺の仮面メソダーは赤いんだぞ、赤いと普通のチャリより3倍は速いんだぞ。もちろん俺比較でだが。
 なのになんでこいつは追いかけてくるんだよ。意味わかんねぇ。
 とっとと逃げてバイト行かねぇとな。なんでバイト行くかだと。バカか、お前。今日を生き延びたら、明日のためを考えるのは当たり前だろ。
 それにDVDボックスも欲しいしよ。十万ぐらいするけどよ、パチンコですぐ稼げるだろ。
 だから今は逃げ切らないとな。
 そう思いながら俺はいつの間にか雑木林の中を突っ切っていた。
 多少荒い道を乗り越えないと、あいつからは逃げられない。
「発動――Wild boar」
 俺を追ってくるおっさんが何かを呟いた。
 俺の横を何か通り過ぎた気がした。いやそれは気のせいだった。
 俺の横ではなく、俺を通り過ぎていた。
 俺のマイバイク仮面メソダーだけが雑木林の中を駆け抜けていく。
 俺は通り過ぎた何かに身体をバラバラにされ、道に落ちた。
 おっさんがどうやって俺を見つけたのかとかこの際どうでもいい。
 俺は、俺が死ぬのだという嘘か誠か分からぬことを認識するしかなかった。
 頬をつねることが可能であればつねって確認したかった。でもそれもできない。だって俺の腕は俺の胴体に繋がってなどいなかった。足も、頭も胴体に繋がってなどいない。そして胴体はどこにも見当たらないなんてことを俺は確認して死んだ。

 累計参加者9名うち死亡1名――世知原 春樹。
 参加者残り8名。

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2008-06-07 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 2 : トラックバック : 0
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追憶-7710 第8章 されど遊戯は巡りめく act.49~52

追憶-7710 第8章 されど遊戯は巡りめく act.48-1~48-7はこちら
■私は要請する

act.49 桔梗 真琴

「本気でございますですか?」
「うん、私は決めたんだ」
「我輩め、故ご主人様の想いを考えますればそれはあまりお勧めできませんでございますですね」
「でも私が要請したらその通りやるんでしょ?」
「確かに妖精にとって、いかなる要請でも絶対でございますです。もっとも難易度が高すぎますれば、失敗もありますですが。それは万能妖精でも万能ではないということでご勘弁を」
「でもあらじんの時よりは簡単じゃないかな?」
「五十歩百歩でございましょう」
「それでも私は覚悟したんだ」
 私もあの人も生きていちゃいけない。
 でも私があの人を殺して自害するなんてことは到底できない。
 そのぐらいあの人は圧倒的に狂気じみている。
 たぶん私じゃ倒せないよね、直感だけど。あらじんもたぶんそう言うと思う。
 でもあらじんが死んだときみたいにふたり一緒に死ぬ、同士討ちみたいなことも難しいと思うんだ。
 そのぐらいあの人は警戒している。
 だから私が死ぬのはおそらく確定。  後はどうやって油断したあの人を殺すかどうかだけどね、その内容ももう決めてあるんだ。ジミーにはひどい役目を押しつけることになるけど。
 一番の問題はタイミングだよ。どのタイミングでその内容をジミーに要請するか、それが一番問題。
 ああそうだ。天国で出会ったあらじんがせっかくの命を投げ出した私のことを許してくれるかも問題だったよ。
 でもあらじんはきっと許してくれるよね? ――そんなことだろうと思ったとかなんとか言ってね。
 なんだかんだ言ってあらじんが優しいのを私は知ってるから。
 じゃああらじん、天国でまた会おうね。
「ジミー、行こう。決着をつけに!」

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2008-05-29 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 2 : トラックバック : 0
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追憶-7710 第8章 されど遊戯は巡りめく act.48-1~48-7

追憶-7710 第8章 されど遊戯は巡りめく act.47-8~47-12はこちら

■物語と現実、ふたつのソレロ

act.48-1 大豆谷 嵐

 僕は生きていた。生かされていた。
 生かされて惨事を目に植えつけられていた。
 目を閉じたかった。
 でも目の前にいる狂気にあてられてどうしても目を瞑ることができないでいた。
 逃げ出すことは当然できない。
 殺される代わりに生かされたのだ。
 手を折られ、足を折られ、僕は身動きできずにその場に佇んでいた。
 少しでも身体を動かせば激痛が走った。
 だからじっとしていたかった。
 じっとするしかなかった。
 何かしようとすれば殺されそうだった。
 まだ生きることに執着していた。
 当たり前だ。
 死ぬのだと思って、自分を悔いた。やり直したいと思った。
 そしたら生きていたのだ。
 だったら思ったことをやるべきだ。僕は人生をやり直したいと思っていた。
 今からでも遅くないはずだった。――それを目の前の狂気が許してくれないのだとしても。

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2008-05-23 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 0 : トラックバック : 0
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追憶-7710 第8章 されど遊戯は巡りめく act.47-8~47-12

追憶-7710 第8章 されど遊戯は巡りめく act.47-1~47-7はこちら

act.47-8 下轅 雪枝

 最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。最悪。
 駅の出入り口の一番近くに座っていたのが運の尽き。
 歪曲した笑みを零す殺人鬼によって私は殺された。

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2008-05-16 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 0 : トラックバック : 0
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追憶-7710 第8章 されど遊戯は巡りめく act.47-1~47-7

追憶-7710 第8章 されど遊戯は巡りめく act.46-12~46-16はこちら

■密室ゲーム

act.47-1 佃 音字

 人間という生物である以上、肉体の構成は全て同じだ。
 もちろん、生まれつき欠如を持つ人間もいることはいるが、それでもその欠如した部分以外は全て同じ。
 それでも人の顔やらなんやらに差があるのは肉付きや目の位置やらが違うからに過ぎない。
 そんな差はあるがその差を除けば、肉体の構成は同じで、そこに個性なんてものはない。
 ただの差であり、個人を特定する何かではない。
 個性は、肉体に宿った人格そのものだ。
 人格が違うから同じ肉体を持った人間が異なったように見える。人格さえなければ同じ人間だ。
 つまり同じ人間が無数いる場合、俺を判断する要素はただひとつ。人格のみだ。俺はそう判断していた。
 ジミーと呼ばれるランプが俺を認識し、俺を殺そうとするのならば、俺はその自分の判断に一縷の望みを、いや望みなんてものは糞だ。俺は確信を持って能力を発動していた。
 要請されたジミーは主人たる桔梗真琴へと戻っていく。俺の判断はやはり的確だったということだ。
 俺は人格を操作し、さっきまでの俺を違う俺に変えたのだ。
 だからと言って、ill.Kが死んだわけではない。人格を一時的に変え、回避しただけだ。
 俺は手早く、長ったらしい発動キーを唱え、能力を発動した。
 だから既に俺はill.Kという本当の俺の人格に戻っている。
 さて、これからどうするべきか。思考を巡らす俺を、そして周りにいる大勢を巻き込むように、それは起こった。

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2008-05-10 : 小説:追憶7710(完結) : コメント : 0 : トラックバック : 0
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語る意味を持たない何か

伊藤検事

Author:伊藤検事
メガネっこ。日記は毎日更新。
やるせない毎日とふがいない日々に、
意気消沈中。
小説の更新はここではしなくなった模様。
ネット上のどこかにあるように思えます。
たぶん。

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